2015年07月03日
ふぞろいの同期たち【28】
ベーカーでは浜田さんと私がオーブン仕込みチームと、
永江ベーカーチーフ、草刈さん、伊南さんの三人がもう一つのチームを組み、仕込みや仕上げを担当していました。
私は浜田さんによく怒られていましたが、草刈さんや伊南さんを見てると手際がいいんですよね。
やっぱり菓子作り好きな女性や製菓学校を出てる人は手つきがいいんだなと。
その日の仕事が終了し、終礼後に伊南さんに聞いてみました。
『伊南さん、さっきやってたあの仕上げは何?』
『あれは絞りの練習。メッセージを書いたり、ショートケーキに絞ったり出来るようにね。』
『冨高君もやってみる?』と伊南さん。
その日から仕事が終了してから、私と伊南さんは絞りやケーキのナッペの練習がはじまりました。ナッペとはスポンジにクリームをクルクルと塗るアレですね。
草刈さんは二年制の製菓学校を出てますから今更そんな練習しなくても、となり、、。草刈さんは職人さんと言うよりは、今風の新しいタイプの考えでしたね。時間になったらキッチリ上がる。ケーキも最新のデザインのが作りたかったのかも知れません。
菓子事情に詳しい草刈さんは
『サテライトのケーキはこんなだけど、◯◯の店はこんなケーキの仕上げだよ。』とか教えてくれたり、、新入社員同士で練習したり、話したり。
いつも草刈さんと伊南さんはチーフと一緒にそつなく仕事をこなしているのが羨ましくもありましたが、、
『浜田さんといつも賑やかに仕事してるね〜。楽しそうで、いろいろ教えてもらえてて冨高君が羨ましいよ。』と伊南さんから言われたのは意外でした。
『え? マジで!?あんま気にしてなかったけど…』
浜田さんは実は無口な人で、草刈さんや伊南さんにはあまり、いやほとんど話しかけないらしく、コックさん達の間でも無口で有名らしいのです。
それが、私とベーカーでチームを組むようになり、
『冨高! 冨高! 冨高ーー!』と連呼していて、私が出来が悪いのも有りますが、、
あまりにも仕事の飲み込みが悪いと、
『トミバカ〜ッ!』と言われましたね。さすがに私もムッとして仕事をしてると、
『あ〜!怒った!?』
『トミタカくん怒った?』と浜田さんが機嫌をとるんですよね(笑)
『あんなに浜田は喋れる奴だったんだなぁ…。』と永江チーフが他のレストランのチーフと話してたよ。
『私や草刈さんにはなんかチーフも気を使ってるようで、どんどん言ってもらいたいけど、遠慮してるよ…。』と伊南さん。
同じ新入社員ですが、人それぞれ多かれ少なかれ悩みがあるもんだと知りました。
文字描きは製菓用語ではパイピングと言うんですが、伊南さんは1ヶ月もすれば、メッセージプレートを書かせてもらえてましたね。私は三ヶ月くらい練習してからオッケー出ましたね。

サテライトホテル横浜に在職中の昭和60年代は、バタークリームケーキの婚礼の引き菓子が多く、《寿》の字を一番練習した記憶があります。
今は《寿》書かないですよねぇ。。
2015年07月02日
菓子と料理の違い【27】
ベーカーで浜田さんについて菓子作りを習いはじめ、
菓子作りと調理の大きな違いに気づきました。
サテライトホテルのベーカーでの菓子作りでは、卵を計ったり、砂糖を計り、小麦粉を計り、、計ってばかりなんですね。材料を計り終わったら次は型を準備する、、、。
菓子を作った事がある人には当たり前の作業工程ですが、私はベーカーに入るまで菓子作りに興味なく、調理師学校で製菓の授業はシュークリームやbavaroisなどでしたが参加してませんでした。
ベーカー部門も人手が足りなかったように、まだ昭和のあの頃はパティシエや菓子職人と言う名前さえ知らず、そんなに人気のある職業でも有りませんでした。菓子作りは女性や子供がする事?ぐらい甘い考えでした。
料理は肉や魚などの素材があって、その素材を調理をするので大体想像がつくのですが、
菓子作りは素材から全く違うモノ、違うカタチに化学反応をさせ、想像のつかないモノに変わるので衝撃的でしたね。
例えばスポンジを泡立てる時、『浜田さん、こんな泡立ててこぼれますよ!大丈夫ですか!?』とか、
シュークリームがオーブンの中で膨らむのを『コレなんですか、膨れてますよ!!』と聞いて、
『スポンジは空気をわざと含ませてるから、ギリギリまでここまで泡立てろ!』とか、
『バカ野郎!シュークリームだから膨らんで当たり前だろう!』と、浜田さんが呆れてましたね。
ですから、科学の実験みたいで、菓子作りを手伝うのは面白かったですね。
また、料理の世界は大匙1や、塩少々、塩ひとつまみや、味をととのえてのような感覚に頼る部分が多いですが、
菓子作りは、1グラム単位で計りますし、オーブンでの焼成時間も12分上火を入れて、残り20分は◯◯して、、など感覚ではなくしっかり数字に表すのが緻密で繊細さを感じましたね。

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2015年07月01日
朝一の仕事【26】
『おはようございまーす』
サテライトホテル横浜に出勤2日目。
ベーカー部門の朝は8時出勤。3階のロッカールームで着替え、1階の厨房へ降りると新入社員の草刈さんと伊南さんはもう出勤してました。
伊南さんはショートケーキやミルフィーユに使う苺のヘタとりをしていました。草刈さんはケーキの名前をメモに取りながら、在庫をチェックしています。。
8時頃には浜田さんが出勤。挨拶を交わしたら早速指示を出してくれました。
『冨高君、コレやって、見てろよ。』
チョコレートの板をセルクルの様なもので表面を薄く削り、チョココポーを作る作業です。
『ハイ!やります、代わります。』
見様見真似でチョコレートを削るのですが、浜田さんの様に均一の薄さにならず、、
『削る時に力入れ過ぎ、優しく引け!』
『出来たらコレに飾れ、こんな風に…。』と浜田さん。
『ハイ、飾りました!』浜田さんにチェックしてもらい、
『まぁ、いいか。最初はこんなモンか。ショップに持って行け。』浜田さんのオッケーをもらい、出来たケーキをショップに運びます。
ショップには同じく新入社員で販売員の氷川さんが働いてます。『冨高さんおはようございます〜』と挨拶。販売員らしく優しい声をかけてもらい、ちょっと気持ちも和みます。
『おはよー、浜さん怖ぇから直ぐ戻る。』ケーキを渡し厨房へ戻ると、『これをこんな風に付けろ』や、『よし、出せー。』と浜田さんの指示に従いケーキショップのケーキを仕上げてると、8時半過ぎ位に永江チーフが出勤。
チーフは出勤すると皆んなと挨拶を交わし、ベーカーの厨房横にある事務用デスクに座り、1日のスケジュールを組み立てます。浜田さんが伊南さんに目配せし、伊南さんがチーフにお茶を淹れるのが日課のようです。
10時頃にはケーキショップのケーキもほぼ並び、事務用デスクの前でちょっとお茶を飲んだりしながら、その日の予定を皆んなで打ち合わせます。
どうやら私は浜田さんとチームを組み焼き物、仕込み担当。草刈さん、伊南さん、チーフの三人が仕込み、仕上げのチームの様です。
昭和の終わりの頃で、私が一番年下、草刈さん、浜田さん、伊南さんは22歳、永江チーフが40代前後のチームベーカーサテライトでした。

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