2015年07月16日
情熱のカラク【36】情熱的な夜
ケーキ屋さんやペストリー、ベーカー部門では、朝一番で作るケーキを、朝出しと表現していました。
朝出しのミルフィーユを作り終わり、カラクの朝出しケーキを作っている浜田さんに合流しました。
『昨日はどうでしたか?』と尋ねてみました。
『昨日は帰ったら12時過ぎとった。今度付き合ったお礼に牛丼奢ったるわ。毎回歩いてるよ、伊勢山はお手伝いやからなぁ、交通費使ったら赤字やから歩くんや〜!』さすが関西人たくましい浜田さん。
『今日カラク焼いていいですか?』さっき言われた事を忘れない内に焼きたかったので聞いてみました。
『今日は焼かんでぇ。まだ在庫有るしなぁ…。
チーフに聞いてみるか。』浜田さんが永江チーフに今日の予定を聞きに行ってくれました。
『冨高イイよ!仕事をが終わったら練習で焼いていいよ〜』と永江チーフが半分冗談で、練習をしてくれる新入社員が嬉しいのか、ちょっとおどけて言いました。
永江ベーカーチーフは、『ちょっと試したいことや練習したかったら幾らでも材料と厨房を使って良いいよ。』と常々言っていました。
あの頃は材料はバターなど高価な物はあまり使えませんでしたが、技術の向上や上達の為なら惜まない、職人や料理人を育てる風潮がサテライトホテルにはありました。
1日の予定が終了し、終礼も終り、伊南さんはいつも通り小一時間ほどパイピングの練習をして『冨高君まだ上がらない?お先に…』と上がっていきました。『俺のタイムカードも押しといて!』とお願いし、遂にベーカーには私一人。
オーブンのスイッチを入れ、器具を全部揃え、早速カラクのレシピを計り作業を始めました。
20コートのミキサーに材料を入れ、バターをビーターで混ぜながら白っぽくなる迄立てていき、砂糖や卵、チョコレートを順に入れていきます……。
…出来上がった生地を型に絞り入れ、オーブンに入れ40分。。
生地を焼成してる間に三階にある従業員食堂で夕食を食べる事に。
従業員食堂にはレストランのコックさん達がテレビを観ながら食事をしていました。相原さん、兼子さんと一緒に新入社員の森田もいます。『冨高、珍しいなぁ〜』と森田が小さな声で囁いてきました。
『ああ、たまにはね…。』いつも夕方には退社してるベーカー部門の私がいるので、ビックリしたんでしょう。先輩達は私に興味が無さそうです。
『また連絡するよ!高橋さんトコ行こうぜ、、夏休み。』と森田。
高橋さんは調理学校の同期ですが、ご家庭もある40代の男性で、脱サラして伊豆にペンションを開業する為に調理学校に入学したのでした。
『じゃあ。』
お互い言葉少なに森田は先輩達の食べた食器を急いで片付け厨房へ降りて行きました。
『じゃあな。』と私も返し、、
森田も今、先輩たちに揉まれ、料理人の世界に漕ぎ出してるんですよね、
ちょっと前のブログで、
パワハラなど無いのびのびとした職場と書きましたが、あれはベーカー部門に、私に限ってなのかも知れません。レストランのコックさん達は、競いしのぎを削ってってるのかも…。
食事を手早く終わらせ、急いでベーカーに戻りオーブンを確認してみました。
うーん、バターを常温に戻すのが遅かったのか、ちょっと固かったのか膨らみが今ひとつのカラクが焼きあがりました。
私は2回目のカラクの計量をはじめました。
森田も先輩達から揉まれてるし、浜田さんも伊勢山で無報酬で働き歩いて行ってるし、、そう思うと、
自分も、お前もなにかに打ち込めよ!
そんな情熱が沸き上がったのかも知れません。
2回目のカラクは、、なかなか良い出来でした。この焼き上がりがもう一度焼けるか、、3回目を焼きはじめました。
この頃にはレストランの遅番の森田達も帰りました。
『おーい、まだやるのか?そろそろ終わりにしろよ〜』遠くのレストランの厨房から声が聞こえました。
『はーーーーい、お疲れ様です!』と返し作業を続けました。
3回目はちょっと合わせすぎたのかも知れません。生地がちょっと割れてしまいました。。
『数をこなせばうまくなるよ。』と、永江チーフは言っていたし、いくら使ってもいいと言ってたなぁ。。
4回目、5回目と計量をし、、、
6回目、7回目と焼き、、、、
もうこの辺からは何回目かもカウントせず、、
なにかに取り憑かれたように仕込んで焼成を繰り返していたんだと思います。
その日は一晩中、
レストランの朝食係が出勤するまでカラクを焼き続けてしまい、、
翌日大問題になってしまったんです!

Posted by トミ at 00:40│Comments(0)
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